最近電波の受信が激しい。
体はもうボロボロで、神頼みでもしたい気分だった。もうおれは死ぬんじゃないか。
敵は目の前にいるのに。こんな無様に死ぬのは、いやだなあ。
最近体が重たくて、なんだか食欲もうせてきた。らしくないと周りの人間からは好奇の目でみられたが、俺のことをよく知る人物は、もう忘れようよと言うだけだった。そんなこと言われるくらいなら、笑われた方がずっといい。
真月零が敵だったのだ。考えもしない最悪のシナリオだった。ああ、うまいこと利用されちまったぜ、ハハハ。そうやって笑いあう仲の人間が、いつの間に彼になっていたんだろう。不自然なまでの自然さで、彼は輪に溶け込んでいたのだ。いや、彼のあまりにもまっすぐすぎる言動に、多少なりとも周囲は違和感を覚えていたのかもしれないが。波長を見事に合わせてきた、拍手、拍手。完敗だ。
もっとも、決闘に勝利したのは俺だったが。
あれからバリアンとの遭遇はまだ、ない。このまま襲ってこないなんてことはあり得ないが、今はそんなことを考えられるほどの余裕がなかった。…あいつ、生きてるのかな。
「こら、遊馬!いつまでぼーっとしてるの。帰るわよ」
小鳥が手を引く。実感のわかぬまま時間は過ぎゆき、無心で家路につく。小鳥に迷惑ばかりかけて申し訳ないと、どうしても顔を上げられない。うつむいたまま無言で歩く。少しばかり速度をあげて、歩く彼女が力強くうつる。
お前らはショックじゃなかったのかよ、でも俺も相当依存してんだなあ。頭の中で同じセリフがまわりつづけて、言葉にはしないが彼女はわかっているのかもしれない。鈍感な俺でも気づいてるさ、お前は俺をこんなにしたベクターがゆるせないんだろ。
「じゃあ、また明日ね。ちゃんとご飯食べなさいよ」
「わかってるよ…ありがとな、小鳥」
食欲はまるでなかったが。社交無礼ってやつ。
「心配掛けてごめんなあ、アストラル」
「気にするな、心の整理とは難しいものだ。現に私にも、まだよくわからない事が多い」
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